塾長鍼灸師のあたまの中。

ここだけの話。

STAY ALIVE

「311で死んだ人と、自殺した人、どっちが多い?」

緊張し過ぎて手がしびれてきた。

 

「悲惨なニュースよりも悲惨な現実だと思わねぇか?」

体中が熱くなって、頭がのぼせ上ってきた。

 

「この社会、何かがおかしいと思わねぇか?」

ここに俺は立っていていいのか?相応しいのか?

 

「物に囲まれすぎて、情熱が薄められてると思わねぇか?」

頭が真っ白になって、口がからっからに渇いてきた。

 

「この国を変えるのは誰だ?俺たち大人じゃないんか?」

次の言葉はなんだっけ。

 

「・・・」

やばい、何か、続きを叫ばないと。

やばい、やばい、ヤバイ…

 

「ダイキでした~!!ありがとう!!」

と、亮平。パチパチと、心もとない拍手が鳴った。

 

テハンノっていう大阪の十三にあるライブバーのチャレンジデー。

「出演料無料やから、一回やってみたら?」

そう誘ってくれたのは、大学に社会人入学で入ってきた岩崎亮平。

年が10コくらい違うアーティストだ。

「その日俺も出るからさ。」

 

まだまだ言いたいこと沢山たくさん用意してきたのに、

その1%も叫ぶことができなかった。

 

原発を京都鴨川の河川敷で叫んだFrying Dutchmanみたいな、

熱いステージに憧れて、マイク一本でステージに立った。

 

「そんなに想いあるなら、一回今思ってること全部、紙に書いてきて見せてよ。」

「ええやんこれ!そのままステージ立てるで。」

背中を押してくれた。

 

その日2番目くらいのステージで、後のステージは正直殆ど覚えてない。

はぁ、なんでこんな状態でステージ立とうなんて思ったんやろ。

自分にはまだ早かったんかな。

みんなに何て思われたんやろ。

ぼーっとステージの方を眺めていた。

 

正気に戻るまで、だいぶ時間がかかった気がする。

気付いたら最後のステージ。

 

亮平率いるバンドが出てきた。

曲は、僕のお気に入りだった。

彼のオリジナル。

 

アコギを構える。

張り詰めた、弦を指で捉える音が、

スピーカーを通して伝わってきた。

僕はこの音が好きだ。

 

STAY ALIVE

大事な人を裏切らないためにここまでSTAY ALIVE

この命捧ぐべき人のため惜しまぬように。

仲間を裏切らないためにここまでSTAY ALIVE

この命使われるべき時に惜しまぬように。

守るべきものを守れるようにSTAY ALIVE

愛すべきものを愛すためにそうSTAY ALIVE

 

僕はステージの上に立って、これまでの人生では感じたことのないくらいの恥ずかしさを感じた。でもその恥ずかしさが高まれば高まるほど、生きてるって実感が強くなった。

「恥ずかしいから人間なんや。恥ずかしくないなら、人間じゃない。」

そんな意味のわからない言葉をつぶやきながら、ここから始まる人生を想った。