ファミリーヘルスの高め方

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「竜とそばかすの姫」モヤモヤ部分考察(ネタバレあり)

「竜とそばかすの姫」という映画を、IMAXで観てきました!
前評判から「これは映像美と音楽を楽しむためにいくべし!」と思い立ち、IMAXは初体験だったのですが、
「この選択は間違ってなかった!」と思えたのは、本編が始まる前。
着席した段階、宣伝を見てる段階から「これ、ただの映画館じゃねぇぞ…」と、鳥肌が止まりませんでした。
言わずもがな、本編では、何度も圧倒され、何度も感動の涙を流しました…
 
さて、公開から1週間。色々と感想ツイートなどを見ていると、
・映像がとにかくきれい
・音楽(ミレパ・中村さん)最高
・声優兼歌い手として中村佳穂さんがすごすぎる…
(個人的に、中村さんと奇跡的な共通点があり、京都にゆかり深く、かつ生年月日が全て同じ!!という中村さん。すんげー応援しています!!)
 
というものが多いのですが、その一方で
・ストーリーがよくわからなかった/納得いかない・モヤモヤする
という方も散見されました。
 
特に「あの後、結局、竜の家族はどうなった?すずは父親に対して一度は暴力を止めたけど、それだけ?根本解決になってなくね?あんなんじゃ虐待は止まらんでしょ」という意見が、ストーリー懐疑派の方には多めなのかな、と。
 
ところで、僕は普段「ファミリーヘルストレーナー」という、家族関係を扱う仕事をしているのですが、
今回はそんな目線から見た「竜そばの家族的背景と、あの大雨の場面の意味」について考察していきたいと思います。とにかく大好きな作品だったので、気合い入れていきます!
 
ただし、半分以上、妄想(というか描かれていない部分多い(-_-;))なので、「こんな見方もあるんか~」くらいで思っていただけたらと思います!
 
1.すずの想い
ここは重点的に描かれていましたが、改めて確認。
・幼い頃(5~6歳?)に母をなくしていて、トラウマになっている
・それから上手く世間とコミュニケーションが取れていない
・その象徴として「歌が歌えないこと」と「父とうまく会話ができない」
・家族の欠損?や、それによる心の穴?を象徴するようなイメージが色々出ていた(犬の前足、お気に入りのコップ等)
・Uの世界で「違う自分=Belle」になることで、自分に自信を取り戻していく。しかし現実世界での傷は癒えない
・母は「子どもを助けるため」に自己犠牲を払った
・竜の心の傷に触れ、その本質的な問題解決に必死になることで、当時の母と自分の想いを重ね、傷が癒えていった
 
2.竜の家族の背景
ここは、ほとんど描かれていない部分なので、色々な劇中のヒントから、妄想(笑)していきます。
・竜は何度も傷ついていて、「結局誰も助けてくれない」と心を閉ざしていた
・竜と弟は、父親から虐待を受けている。
・父親は、外面は良く、「いい父親」として世間ではふるまっている
・この家族に母親は出てこない
↓ここから妄想↓
・竜は中2で14歳。弟は小5で10歳。
・5年前、母親は不慮の事故か、あるいは病気など、誰も責められない理由で亡くなった
・それまでは何不自由ない、幸せな家庭だった
・父はそこから「俺がしっかりしないと」と、自分自身の心の傷に蓋をして、一生懸命に仕事をして稼ぎ、また休みなく家庭・子どもを守った。
・竜はその父親の姿を見て、「自分も長男としてしっかりしないと」と思っていた
・ある日から、父親は「俺がしっかりしないと」という自負が強すぎたことや、心の傷が癒えていないのに蓋をしていること等の強いストレスから、「自分が正義だ。これはしつけだ。」と言い訳をしながら家庭内で暴力を振るうようになっていった。
・しかし竜は父の深層心理をどこかで見抜いており、父親がこうならざるを得ない状況に共感もしているため、虐待を甘んじて受け入れていた。
・しかし弟だけには被害が及ばないように竜は必死で守った
・弟は、母親が亡くなったことによって残っている家族の傷が、まだ癒えていないことを象徴するかのように、5年前で時が止まっていた。
・つまり身体年齢は10歳ごろなのに、精神年齢がまだ5歳程度と幼い印象
・しかしその幼さや、「実はまだ母親を亡くした傷が癒えてないこと」に向き合わされる弟の存在に苛立ち、父の虐待は激化するという悪循環があった
・これまで母を亡くしたことによって様々な社会的支援サービスを受けてきて、その度に竜は期待をしてきたが、父親が外面はしっかりしているように見えてしまうので、虐待の解決には至っておらず、その度に何度も失望してきた。
 
3.あの大雨の場面の意味
・その行き場の無い怒りを抱えた竜が、Uの世界で暴れていた。
・Uの世界の竜の城にあった、割られた女性の写真は、母親であり、顔は見えないが、どことなくすずに似ていた
・何度も手を差し伸べてくるBelleに対して、「どうせ何もできないだろう」と心を閉ざしていた
・しかしUの世界でアンベイルされ、本当の姿を曝して歌うBelleの姿に感動し、「本当は来てほしい。助けてほしい。」と願った
・すずが現実世界で現れ、出会うことができた
・父親に引きずり戻されそうになるも、すずが傷つきながらも立ちはだかって守ってくれた
・すずのすごみに、父親はしりもちをついて、去っていった。
↓ここから妄想↓
・父親は、亡くした母の姿に似たすずを見て「俺は今まで何をしてきたんだ…」「亡くした母に顔向けできない…」と我に返った
・竜も、父から弟を守るという対症療法でなく「母を亡くした傷が癒えていない」という家族共通の根本課題を、本気で解決しようと決意した
・あの後家に帰った竜と弟は、正直に今の気持ちを語り、また父親もその姿に成長を感じつつ、建前でなく本音で、今の正直な気持ちを語った
・父親にとって、その日から竜は「守ってやるべき存在」でなく「一緒に課題解決する仲間」となった
・母親を亡くしたことを振り返り、これまでの5年間を反省し、これからどうしていくべきかを話し合った
・弟はそれから急激に人間的成長を果たし、同時に家族が「ただ一緒に暮らしている人たち」から「チーム」へと成長していった。
 
 
いかがでしたでしょうか?
半分以上、普段、家族の問題と向き合う僕視点での妄想でしたが(笑)こんな背景と展開なら、辻褄があう自然な流れなのかなぁ、と思っています。
要は、二つの「母を亡くした家族」のストーリーや課題が交差し、どちらの傷も癒えた、ということですね。
また、僕が感じたのは「家族の誰かが亡くなった時、その傷は残された皆に平等に訪れるのではなく、誰か一人が引き受けざるを得ない」というようなすずと竜の描かれ方に、とてもリアリティを感じました。
しかし、すずや龍がその傷を一身に引き受けてくれているからこそ、それを心配するという構図で、すず側で言う父や、しのぶ君、合唱団の5人、ひろちゃんやるかちゃん。竜側で言う父や弟が、救われてきたという感じもあって、何とも言えない感慨にふけっていました。とてもリアルな気がして。
いや~、やっぱりいい映画でしたね!!「家族関係」という目線から見ても、最高でした!
 
あと、ここからは余計なお世話分析ですが、細田監督の、母親像って、なんか偏ってないですか?笑
強すぎる、父のように強い母親像(サマーウォーズ)だったり、男性として理想的すぎる、すべてに受容的・受動的な母親像(おおかみ)だったり、そう思えば母親不在(バケモノ・竜そば)だったり…
何か、細田監督自身の、母親に対する傷・トラウマのカタルシスなのかなぁ…とか思っちゃいました。笑
 
以上です!最後まで読んでいただいてありがとうございました~!