ファミリーヘルスの高め方

家族・健康・教育・生き方

鍼灸師には、信頼と教育力が必須。(2/2)

信頼は、3つの要素から成り立っている。
①知能(知識×能力。これは、鍼灸における技術、と言い換えてもいいだろう)
②社会的な立場(肩書き・実績など)
この二つはわかりやすい。その上で、もう一つが
③人格 である。
 
人格とは、人となりであり、「なぜ鍼灸を私にしてくれているのか?」という、ストーリーや背景、目的や鍼灸や患者に対する想いである。
例えば僕の場合であれば、「小さいころから肩もみが好きだった。そして周りに体調が悪い人がいたときに、何もできない無力感が強くあり、誰かを助けられる力が欲しい、と高校生の時から将来の夢は『人を癒せる人になる』となって、今鍼灸師をやっている。」こんな感じ。
こんな話を聞いた上でなら、「ちょっとこの人からなら、鍼灸受けてみてもいいかも」となってくれそうな気がしませんか?
 
そして、人格にはもう一つの側面が。
それは、先ほどの想いの部分が明確なことに加え、誠実であるかどうか、つまり言動と行動が一致しているかどうか、が非常に重要だということだ。
実は、想いの部分にはあまり貴賤がないので、ただ正直であればいいと思うのだが、誠実であるかどうかは、信頼に大きく関わる要素である。
最後に、責任感があるかどうか。
 
この辺りで、人は他人の人格を判断しており、それが信頼につながる。
 
ここまでを軽くまとめると、
鍼灸において信頼は、そもそも治療を受けてもらうために必要不可欠な要素であり、
信頼を得るために治療技術を高める必要があるのだが、それ以外の手段として
社会的地位を高めることや、
患者と先生という関係で出会う前に顔を知ってもらう機会をつくり、
誠実に生きて人格を磨く努力によっても信頼をえることができる、ということだ。
そしてそれが、治療効果をも高めることにつながる。
 
 
2.鍼灸における教育の意義
患者に出ている症状は「生活という構造そのものが病んでいる」の結果に過ぎない
 
鍼灸でひとまず目の前の症状を緩和し、患者の余力をつくることはもちろん大事なのだが、
患者の病んだ生活構造全体を捉え、最小コストで構造を変えるアプローチを考えることの方がもっと本質的で、大事なことだと思う。
なぜなら、鍼灸で症状改善をしても、生活が変わらなければ、ほぼ確実に同じような悩みが再発するから。
 
生活を構成するものは多い。
 
睡眠、食事、仕事、環境、習慣、呼吸、姿勢、運動、生き甲斐、家族、人間関係、お金、将来への不安…
それら一つひとつに、どういうタイミングで、どういう内容で、どういう嗜好があって、何が特に持続的なストレスになっていて、等…
それらが複雑に絡み合った上で、積み重ねてきた過去の重みもある。
 
それらを一つ一つ紐解きながら、生活という病んだ構造を変えていかなければ、患者の症状は繰り返す。
しかし、生活を変えられるのは、本人のみ。(もちろん、家族や鍼灸師自身を含め周りの人からの協力は強力に作用はするのだが。)
そして、鍼灸の目的が患者の”永続的な健康”なのであれば、本人の考えや行動が変わるような教育をしていく必要がある。
 
人間の行動変容やエンパワメント、あるいは環境づくりや、家族支援の重要さ、ヘルスリテラシーについての内容は、
それぞれに深く濃い内容があるので、またいつかのブログに譲りたいと思う。
 
信頼を得て、鍼灸で効果を出してさらに信頼を深めた後に、生活を変える教育を実行する。
それによって、ようやく目的に一歩近付けるのである。
 
このように、信頼と教育力がある鍼灸師は、患者の本質に迫ることができる。
逆に、鍼灸師ほど人間の本質に迫れる職業は少ないのかもしれない。