僕は、高校の時、進学校に通っていた。
初めて進路の話が正式にされたのは、2年の時だったと思う。
僕は大学のことなどさっぱりわからなかったため、とりあえず兄が行っていた大学を第一志望にして、担任との二者面談を迎えた。
「これは、あかんで。瀬戸くん。」
「ほんまはあかんねんけど、特別に見せてあげるわ。」
学年のみんなが、進路として希望している大学名やその数字が、一覧になってまとまっていた。
一覧になっている、希望大学名は少なかった。
「京都大学」「東京大学」「大阪大学」「○○大学医学部」「神戸大学」希望者多数
その他数名…
僕はその他数名であった。
僕は率直に「気持ち悪い」と思った。
なぜみんながそれらの大学を志望しているのか。
そして、なぜこんなにもこれらの大学に志望が集中しているのか。
全く理解できなかったからだ。
何を理由にその大学を志望するのだろう?
将来僕は、どんな道に進みたいのだろう?
そして僕は、なぜ大学に行くのだろう?
大学に行く以外の選択肢には、どんなものがあるのだろう?
自分の進路に対する意識が180度変わったタイミングだった。
僕の好きなものは何だろう…?
なぜ鍼灸師を目指すのか。part1 - 塾長鍼灸師のあたまの中。
僕の好きなものは”肩もみ”だった。
そこで僕は、実際にそれを仕事にしている人に話を聞こうと、 当時通っていた整体院に行った。
「どんな仕事なのか、少しお話聞かせていただけませんか?」と受付でお願いしてみた。
すると、「今時そんな高校生は珍しい!」「診療時間が終わるまでちょっと待ってね。」と言われ、診察時間が終わると、院長と副院長が、僕だけのために、後片付けそっちのけで話をしてくれた。
色んな話を聞いた。まさに「手に職」の世界。その身一つでいろんな現場で活躍できるようになる、という話。災害時に整体師が活躍した話。整体師のキャリアの話。
かっこよかったなぁ。すごく憧れた。自分の仕事をこんなにも熱く語れる人がいるんだなぁ…
そして、「大学には入っても意味がない。」「それくらいなら、高卒で整体院に就職しながら、専門学校に通って資格を取る4年の方が、よっぽど密度が濃い。」という話。
迷ったなぁ。
自分は大学に行くべきなのか。
最終的に、僕は、大学進学を選んだ。
そこには、色んな理由があるけれど、多分、この一言に尽きる。
「なぜ人は癒されなければならないのか、知りたい。」
整体師に高卒で整体師になったとしても、その理由はわからなさそうだった。
もっと自分の世界を広げてみたいと思った。
つづく。