塾長鍼灸師のあたまの中。

ここだけの話。

2個目のたこ焼きの味。

たこ焼きが食べたくなって。
道沿いにあった屋台に寄った。
車を停める場所がなくて、狭い道に入り込んだり。
少し苦労してなんとか辿り着く。

 

「たこ焼き下さい。」
店員さんが3人いて、みんな暇そうだった。
「何味にしますか?」
既に焼き上がったたこ焼きを鉄板に移す。
「しょうゆ味で。」
焼き上がったたこ焼きがあるけど
「今から焼くので15分くらいかかりますね。」
「あ・・・わかりました。」

 

そう、口から言葉が出た後に、色んなことを考えた。
なんでだろう?迷惑だったかな?ソース味だったら待たずに食べれた?
ケータイも車に置いてきたし、暇そうな店員さんと15分対面してるのはキツイな・・・
今からでも「ソース味にしてください」って言おうか?
いやでも、もう焼き始めてるんだから、逆に迷惑?などなど。

 

ま、覚悟を決めて待つか。

 

ちょっとした段差に座り込む。

何もやることのない、15分間。

こんな空白は、久しぶりだった。

 

今日は晴れていて、昼間は暑いくらいだった。
生ぬるい夜風でも、吹かれていると気持ちが良い。
ソースの焦げる匂いを嗅いでいると、なんとなく中学生の頃を思い出す。
何もいらなかった、中学生の頃。
夜に出かけるってだけでワクワクしてたあの頃。
夏祭り。花火大会。浴衣。でみせ。うちわ。

 

「最近ちょっと、満足の閾値が上がりすぎてるな。」


この前ばあちゃんの一周忌があって、お参りに行った。
身体のあちこちがしんどいじいちゃんに、肩もみをした。
肩もみをしながら、話を聞く。
ばあちゃんが亡くなってから、なんとなくじいちゃんはお喋りになっていて、
その時も初めて聞く話ばかりだった。

 

「鹿児島の、貧乏で何もない村に生まれて育ったんや。」
「学校でも、勉強なんて教えてくれんくて、炭焼きばっかりさせられてきた。」
「戦争中やったからな、みんな働いてた。」
「高校出てすぐ、大阪に出てきたんや。」
「お金も無かったから、三等車っていう、各駅停車に乗るしかなくてな。」
「パンツとシャツだけ持って、大阪まで丸二日かけて、ようやく辿りついてな。」
「始めた仕事でも、仕事を教えてくれる人がおらんくてな。自分でやって覚えるしかなかったんや。」
「それでも、何とか頭下げて、やらしてもらってな。あの時は悔しかったなぁ…(涙ぐむ)」
「何も教えてくれへんのに、厳しいことだけ言われてな。」
「勉強なんてしたことなかったから、免許取る時は苦労したな。」
「実技はできるんやけど、なんせペーパーテストが受からんのや。」
「それでも結局、色んな仕事させてもろたな…(誇らしげ)」
「会社に務めたりせんと、ずっと自分の名前で仕事してきた。」
「だから、厚生年金なんか入れんくて、今、年金が少ないんや(笑)」

 

わからん話もあったけど、これまでの人生を振り返って、
感涙を流すじいちゃんの姿に、僕も感動して。
自分のルーツに、こんなドラマがあったなんて。
自分の人生が、いかに恵まれているか・・・

 

「どうも、お待たせしました。しょうゆ味6個です。」
「あ、どうも。」ふと我に返る。

 

久しぶりに食べたたこ焼きの味は、
懐かしい味だった。

 

時間があったら、すぐに何かで埋めようとして、
忙しく色んなことを頭の中でぐるぐるぐるぐる考えて。
なかなか満足な時間を過ごせない自分。

 

「ただ、何もせずに待って。ただ、たこやきを食べて。それでいいじゃん。」
「じいちゃんも、大阪で生きてきて、たこ焼き沢山食べたのかな。」

 

じいちゃんは、僕の人生を見て、どう感じているんだろう?

 

そんな、新しい目線が生まれ、新鮮な気持ちで、2個目を口にほおり込んだ。